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ゲノム編集技術応用食品についての考え方


1.ゲノム編集技術応用食品とは

  1. ゲノムとは、遺伝情報の総体を示す言葉です。
    すべての動植物は染色体にある遺伝子(DNA)により性質等が決まりますが、固体内のすべての遺伝子情報のことを「ゲノム」と総称しています。
  2. ゲノム編集技術とは
  3. 1)栽培に適した新しい品種を作ることを品種改良・育種といいます。動植物は、遺伝子の変化によって性質が変化します。私たちは、それを利用して品種改良・育種を行い、植物の性質を自分たちにとって都合の良いもの(病気に強くてたくさん収穫でき、さらにおいしいなど)に変えてきました。
  4. 2)私たちが口にしている野菜や果物のほとんどは、「品種改良」されたものです。
    品種改良は遺伝子の変化を利用したもので、長い年月をかけて交配や突然変異などを元に改良されてきています。それら品種改良は偶然の繰り返しで、有用な作物を得るには長い期間を要してきました。
  5. 3)このように、従来の育種では長い年月をかけて品種改良を行ってきたものを、ゲノム編集技術では、ゲノム情報(遺伝子情報)を読み解いたうえで、特定の遺伝子を狙って切断し、その部分に変異を起こさせ、欲しい性質を持つ品種(GABA高含有トマトやソラニンをほとんど作らないジャガイモなど)への変異を短期間かつ高い確率で起こすことができる新しい技術です。
  6. ゲノム編集技術応用食品とは、ゲノム編集技術を用いて作られた食品で日本では2021年から流通が始まりました。
  7. 2022年3月時点での諸外国の取り扱いに対する対応はさまざまで、アメリカや南米諸国、オーストラリアなどは、日本と同様、外来遺伝子等が残存していないことが確認されれば規制対象外としていますが、EUやニュージーランドは、遺伝子組換え食品と同等と位置づけ規制対象としています。

2.安全性についての考え方

  1. 現在、実用化がすすめられており一般流通される可能性があるのは、外部遺伝子が残っていないタイプのものであり、従来の育種技術での品種改良と同レベルの安全性と考えられています。
  2. 目的としないDNAの意図しない変異による安全性への影響については 意図しない部位の変異(オフターゲット)(※注2)が発生することは前提とされ、継代培養(※注3)や選抜過程を経た、有用で優れた性質のものだけを「選抜」して使用するため、目的外の変異が生じているものは従来から行われている品種改良と同様に排除できると考えられています。
  3. 開発者が厚生労働省に届け出る際には、「外部遺伝子が残っていないこと」、「毒性やアレルゲンなどの危害性がないこと」などを根拠とともに示すことが求められています。厚生労働省は、届出情報を確認し、従来の品種改良でできた食品と同様とは言えない場合には、専門家に意見を求めたり、開発者に対して安全性審査を求める場合もあるとしています。
  4. 仮に外部遺伝子が導入されたものが今後開発されたとしても、それは遺伝子組換え食品と同等の安全性評価をした上で流通することになります。
  5. 外部遺伝子の残らないゲノム編集技術応用食品については検査での検証ができないことから現状では商品への表示義務はありません。
  6. 注2:オフターゲットとは、目的の遺伝子以外が変異してしまうこと。
  7. 注3:継代培養とは、培養容器内で増殖した細胞を、新しい培地に移し替えて、継続して培養を維持すること。

3.有用性についての考え方

  1. ゲノム編集技術は従来の育種技術に比べて、狙った性質や機能を確実に短期間で実現できるという点で優れた技術であると考えられています。
  2. 世界的な人口増加や気候変動に由来する地球規模の食糧確保などの課題への対応、またアレルギー物質を減少させてアレルギー症状をお持ちの方に有用な食品を開発するなど、大きなメリットをもたらす技術となりうる可能性があります。

4.取扱いについての考え方方

  1. ゲノム編集技術応用食品は、外部遺伝子が残らないため商品への表示義務がありません。そのため取り扱いについて制限を設けることはできませんが、市場流通が始まったばかりで消費者への認知が十分ではないことから積極的に取り扱う段階にはないと考えます。
  2. 消費者の知る権利・選ぶ権利を確保することを国に求めていくとともに取引先へも情報提供の重要性について理解を求めます。
  3. ゲノム編集技術応用食品を取り扱う場合、届出制度が正しく機能するまでは制度の運用状況を注視しながら、届出の状況を確認します。
  4. ゲノム編集技術応用食品は2021年から流通がはじまった新しい技術であり、消費者への認知が十分とは言えないことからリスクコミュニケーションが重要であり、組合員や役職員の学習の場を設けるとともに最新の情報収集を行います。


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