「第15回産直交流会2021」報告Ⅱ~【特集】3生産者が語る「産地の現在の課題と今後の方向性」~
2月17日(水)奈良ロイヤルホテルを配信会場としオンラインで開催した「第15回産地交流会2021」を3生産者から報告された「産地の現在の課題と今後の方向性」をダイジェストで紹介します。
「第15回産直交流会2021」報告Ⅰ~オンラインで開催しました~はこちら
「第15回産直交流会2021」報告Ⅲ~オンラインでの交流、質疑応答~はこちら
歯止めがかからない酪農家の減少、若い酪農家に魅力のある仕事に
大内山酪農農業協同組合 営業部部長 水谷義照 氏
●産地の現在の課題と今後の方向性について
設立は昭和23年今年で73年目となります。ならコープとの取り引きは46年目を迎えております。、三重県内南北に点在する20戸の農家で毎日絞られた牛乳は新鮮なうちに工場に運ばれています。飼養頭数は4,166頭で生乳生産量は年間で34,126t(日量93.2t)あります。 ならコープ様へは産直ブランドとして酪農家のみなさんは乳牛に愛情を注ぎ良質で安心安全な牛乳づくりに努めています。 直面している問題では、酪農家の減少に歯止めがかからないことです。26年前には86戸あった農家が現在20戸まで減っています。この先も減少するものと予想され酪農組合としても存続が危惧されています。年々農家戸数が減少していくのに対して、生乳生産量は通常、農家の減少に伴って減っていくものですが、逆に増えています。これは飼養頭数が少ない農家が辞めていく中、生乳生産量を確保するために乳牛の頭数を増やす努力をした農家のおかげです。
●酪農家が将来に渡り安定した経営と生乳生産が続けられるように
酪農を辞め離農する原因と跡継ぎがいないのは、労働が過酷、休みが少ない(決まった時間に搾乳、決まった時間に餌やりなど)経営に不安(建物器材の老朽化、乳牛の交信費用、飼料価格の高騰など)があります。 今後の方向性として、少しでも長く酪農を続けていただくために、若い酪農家に魅力のある仕事とするために組合として支援をおこないます。作業の省力化をはかり搾乳、給餌の自動化し、酪農ヘルパーの制度の活用をおこない休日を増やします。補助事業の活用です国からの補助や組合独自の補助事業として乳牛の購入から牛舎の改築など費用の一部の補助と申請に関する手続きを代行し、経営の手助けをします。三重県内の酪農家を集結し、いままで個々の酪農業でやってきた業務を統一することで人件費やコストを削減できるようになります。将来的には生乳協間以外の事業にも共同でおこないさらにコスト削減を図り、酪農家が将来に渡り安定した経営と生乳生産が続けられるように生産者と職員が一丸となって酪農業を支えていきます。
●50年100年続く酪農を目指して
酪農家の現状としてこれから将来に渡り、若き酪農家も育っています、自身の酪農の未来図を思い描き夢と希望を持って進んでいきます。牛舎を増築し頭数を増やし従業員を雇い改修した酪農家もあり、50年100年続く酪農を目指すには、どんな自然災害が起きても搾乳が続けられる設備とシステムをつくり、県内の酪農家を集結して個々の酪農業でやってきた業務を統一することで人件費やコストを削減します。若き酪農家も育っています。若い酪農家に魅力のある仕事とするために、少しでも長く酪農を続けていただくために組合として支援を行い、生産者と職員が一丸となって酪農業を支えていきます。
函館ロイヤルファーム牛は育ち方に差が出ないように飼育しています
㈱ロイヤルファーム 道南出張所所長 吉田敬二 氏
●ロイヤルファーム牛とはこんな牛
函館ロイヤルファーム牛は、北海道の函館近郊の道南地区で育てられています。主流な乳牛であるホルスタイン種のオスを肥育しています。現在、自社牧場を一つに預託農家さん4軒で約3,050頭の牛を飼っています 総飼料として使用しているのは北海道の地元産のチモシーやオーチャードと言う草を食べて元気に育っています。与えている配合飼料は、ロイヤルファーム専用に雪印種苗㈱の飼料工場で原料をブレンドしてもらい、牛の飼い方をロイヤルファームのマニュアルにして育ち方に差が出ないようにしています。また函館ロイヤルファーム牛は自社牧場のRFペンケル牧場と4軒の預託農家さんで飼われおり、自然豊かな森と海に囲まれた空気の美味しい水の綺麗な地域で肥育されています。
●函館ロイヤルファーム牛ができるまで
酪農家さんで生まれた子牛は生まれたときは40~50kgで、生後2週間~1か月くらいで市場へ出ます。素牛農家さんで素牛として市場で購入した子牛を約7か月間育て、7か月経つと体重は300kgくらいになります。肥育農家さんで肥育牛として素牛を導入して12か月半程度育て、出荷目標体重は800kg位になります。RFペンケル牧場とは八雲町の弊社自社牧場で約700頭の牛を飼っています。久次米場長が場員3名と力を合わせ、自社牧場の飼養と他の預託農家の指導をしています。 函館ロイヤルファーム牛は1頭1頭の履歴が明確であり生産管理を行っているロイヤルファームでは、その長年の経験により、肥育の技術管理が確立されております。安心・安全に飼育された豊かな味わいの牛肉を北海道よりお届けしております!
●今後に向けて
今後は「持続可能な経営」に向けて「コンプライアンス」と「安心・安全」を最優先にした肉生産を今後もつづけ、組合員のみなさんに“おいしい”と笑顔になってもらえるよう邁進していきます。
台風による大被害を経験して、恩返しは元気な姿でおいしい商品を届けること
農事組合法人 多古町旬の味産直センター 専務理事 鎌形芳文 氏
●私たちは、農業を通じて、人・環境・地域社会を元気にします
多古町旬の味産直センターは千葉県の成田空港に程近い北東部に位置し、北総台地から九十九里海岸までの広大な平地で、専業・中小農家を問わず、地域の生産者が集まって野菜・米を生産している消費者に信頼・支持される確かな商品を供給し、地域農業を守ることを目指しています。 毎年多くの方にお手伝いに来ていただき交流活動としてすすめています。また産地では20代などの若い生産者もおられ世代交代が進んでおります。
●大きな被害を受けた台風の影響
一昨年10月12日に大きな被害をもたらせた、大型で強い勢力で伊豆半島に上陸した台風19号は千葉県では市原市では、竜巻と推定される突風が発生し、局地的に大きな被害をもたらしました。また10月25日の台風21号では湿った空気が流れ込み、太平洋側を中心に、特に千葉県や福島県に多くの雨をもたらし農作物の被害は、15号、19号と被害を受けたうえで、さらに、冠水など多くの被害がありました。 ビニールハウスでは棟数517件のうち全壊123件半壊、一部損壊317件など85%以上と大きな被害があり、農作物では人参は40%収穫量減となり、さつま芋は直接の被害はないもののハウス倒壊のため次年度の作付に影響があります、またミニ大根は10月~11月上旬ほぼ全滅となり11月20日から蒔き直しスタートの状況となりました。
●元気な姿で美味しい商品をお届けすること
そんな中、ならコープのみなさまより励ましの寄せ書きであったり義援金をいただき、非常に助かりました。大きな被害に遭った時にこういったかたちで勇気づけられ、また全国の生協のみなさま、産地、取引先様よりボランティアやご支援をいただき、やっぱり産直をやっていてよかったと思いました。コロナ禍においてできる交流として、SNSを活用した発信や距離をつなぐITを活用した交流、お手紙での交流、産直交流活動を行ったことにより、多くのピンチを救ってくれました。台風被害1年半後の復興状況では、みなさんの助けをいただき離酪農者は0名で、ハウスの再建も2021年の1月で元に戻りました。そこで私たちができることは何かなと考えた時に、やはり元気な姿で美味しい商品をお届けすることがご支援の恩返しになるのではと思っております。