3.11を忘れない みやぎ生協から被災地・宮城のいまをお伝えします
【第21回 2015年5月7日
苦しみの声をあげない生活困窮者 】
震災で貧困層が拡大した。そんな話をよく聞きます。
最近行われた調査(※)では、被災した2,338世帯のうち年収200万円未満(課税前)の低所得家庭が震災後6.2%増加し、全体の約3割を占めていました。低賃金で家計を支えるシングルマザーやぎりぎりまで生活費を切り詰める高齢者など、弱い境遇にある人ほど状況は深刻です。
東松島市くらし安心サポートセンター(東松島市社会福祉協議会)の阿部誠さんは、昨年、生活困窮者支援モデル事業に取り組む中で、“義援金でやり繰りしてきたが使い果たしてしまった”“精神的に落ち込んで仕事を再開できない”など、まさに生活困窮に直面している人たちに向き合ってきました。しかし一方で、「震災による生活困窮者の全体像が見えてこない」とも感じています。
同センター所長の千葉貴弘さんは、仮設住宅入居者の支援業務にあたっていますが、「“生活が苦しい”と自ら手をあげる人が少ない」ことに気付きました。こんなことがあったそうです。「災害公営住宅への転居費用は一時本人が負担し、その後補助を受けるのですが、当座の6、7万円のお金が用意できない方がいました。被災者サポートセンターの職員が気付いて対応できましたが…」。
辛さや苦しさを抱えたまま声をあげずにいると、誰かが気付かない限り、支援の網の目からこぼれ落ちてしまう可能性があります。「そうした潜在的な困窮者がいることを、頭に入れておかないといけない」と千葉さんは言います。
「仮設住宅の場合、家賃がないことが生活困窮者の存在をより見えにくくしている」と、阿部さんは指摘します。東松島市の災害公営住宅は現在321戸が完成していますが、すでに家賃の滞納があるという話も耳にしており、今後の行方を気にします。
生活再建の道を着実に歩む人と、生きるのが精一杯の人の差がどんどん開いていく被災地。一人ひとりの事情を踏まえ、自立のための支援を続けることが求められています。
※「被災地・子ども教育調査―2014年」(公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン)