3.11を忘れないみやぎ生協から被災地・宮城のいまをお伝えします
【第20回 2015年4月6日】
“心”の回復の格差
「津波に流されたけど助かりました」「PTSDの治療を受けています」。
4年を経過してようやく被災体験や苦しい胸のうちを語れるようになった方々がいます。それもすべてを吐き出すのではなく、ごく一部分をポツリと。
宮城県の調査(※)では、「支援が必要な程度の心理的苦痛を感じている人」の割合は8.2%に達しています。また19%の人が「災害を思い出して気持ちが動揺することがある」と答え、16.9%の人に不眠の症状があります。 (社)宮城県精神保健福祉協会が運営する「みやぎ心のケアセンター」気仙沼地域センターの片柳光昭さんは、「皆さん多かれ少なかれ“トラウマティック”な体験をしているので、語れずにいることが常に心のなかにある」と話します。
さらに最近は、震災直後から指摘されていた「ハサミ状格差」(ダメージから回復できる人とできない人の差が時間の経過とともにハサミが開くように広がっていくこと)が、より顕著になってきました。
片柳さんが被災者と話をする中で実感したのは「いったんPTSDが回復しても生活上の課題をクリアし続けないと現状を維持できない」ことでした。預貯金等の経済的基盤があるか、仕事があるか、あるいは継続できるか、家族の関係性はどうか、また、たとえそれらの条件が整っていても仮設住宅では近隣との人間関係が良くないことで、メンタルヘルスは悪化することがあります。このように生活上のハードルを乗り越え続けないと、“上向きのハサミの刃”にはなれないのです。
さらに高齢者や障害者を支援する側の人たちも人手不足で疲弊するなどの状況が重なり、ケアの難しさに拍車をかけています。「震災で人口流出や高齢化が加速した。まちに残った住民に様々な負担がかかり、その結果としてメンタルヘルスの悪化を招くという状況になりかねない」と、片柳さんはすべての問題が連動するがゆえに解決を難しくしている被災地の現状を訴えます。
「心の復興はまちの復興と連動している」と言われます。「きちんとした住まいが手に入り、雇用環境も良くなることが心の復興を後押ししてくれる」。 新しいまちができるのはまだまだ先。心のケアの取り組みはこれからも続きます。 (※)「平成26年度応急仮設住宅(プレハブ)入居者健康調査」
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