3.11を忘れない みやぎ生協から被災地・宮城のいまをお伝えします
【第37回 2016年9月6日】
在宅被災者ひとり一人の復興が果たされるまで
22号で、壊れたままの家に我慢して住み続ける「在宅被災者」についてお伝えしました。それから1年。状況はほとんど変わっていません。Kさん(石巻市)の家は雨漏りがひどく、使える部屋は2部屋だけ。「家族3人分の布団を敷けないから5年間布団に寝てない」と驚くことをサラリと告げます。
在宅被災者が利用できる支援制度は複数あります。しかし内容や手続きの分かりにくさが壁となって利用は進んでいません。「とくに高齢者は、制度の複雑さに戸惑ったり、市に相談して“申請は難しい”と言われたりするとそこで気力を無くしてしまう」と、在宅被災者の支援を続けている一般社団法人チーム王冠の伊藤健哉さんは言います。
在宅被災世帯を支援するNPO法人のチーム王冠は昨年11月から仙台弁護士会とともに在宅被災者の実態調査を始めました。弁護士さんが「これはただ事じゃない」と気づいてくれた。問題を整理し、法律上の課題や必要な手立てを次々に明らかにしていってくれました。これまでに約200世帯を調査し、再建をあきらめていた在宅被災者に災害援護資金で家屋修繕の道を開くなど、他のケースにも適用可能な解決策を見出しています。
9月からは石巻市と仙台弁護士会が連携して在宅被災者の実情を把握する取り組みがスタート。チーム王冠も仙台弁護士会との連携で課題解決を目指します。
在宅被災世帯は1万2千世帯あると言われています。自力再建が可能な人もいますが、あと一息の人やどん底から抜け出せないでいる人はまだ多くいます。「実態把握のスピードをあげないと、どんどん高齢化が進み解決が遅れる。ボロボロの家で“震災さえ無ければ”と無念の思いを抱いたまま老いていくのを見るのは忍びない」伊藤さんはそう訴えます。
在宅被災者の抱えている問題はそれぞれ異なりますが1日も早い復興を待ち望む気持ちは同じです。足を運んで話を聞き、適切な支援を行なう、ひとり一人の実態に寄り添った活動がこれからも続きます。
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