【第17回 2015年1月5日】 店も顧客も喪失、ゼロから始める経営再建

廃業か再建か。仮設商店街の商店主たちはこの4年間、何度も岐路に立たされてきました。顧客だった地域住民は被災で散り散りになり人口も減少。加えて資金や後継者の問題などもあり、「再建して果たしてうまくいくのか…」。将来への不安と希望のあいだで揺れ動く日々を送ってきたのです。  2014年10月、気仙沼市の「鹿折復興マルシェ」が、嵩上げ工事のため元の場所から移転し再オープンしました。ただしそこも区画整理事業のため2016年8月末には閉鎖になります。
他の仮設商店街でも、「しおがま・みなと復興市場」が2016年8月末まで、「南三陸町さんさん商店街」が2016年11月末までと存続期限が決まっており、復興事業の進展の中で商店主たちは新たな決断を迫られています。
山元町合戦原の仮設商工施設で理容室を営む辻憲子さんは、新市街地に店舗兼住宅を建て営業を再開する予定です。「土地の引き渡しが今年9月、店舗の完成はその先だからまだまだ時間がかかりますね」。
震災後の住民離散で、辻さんの店も大勢の顧客を失いました。仮設商工施設への入店後は、隣接する仮設住宅からの来店客が増えましたが、新市街地へ移転すればそれもまた変わります。
固定客相手の商いであるはずなのにその顧客は、いまも流動的な状態が続きます。「新市街地も、以前住んでいた地区とは大きく環境が変わるので不安ですよね」。
店も顧客も失い、マイナスから出発した商店主たちにとって、本格再建は決してゴールではなく、ようやくゼロ地点に立ったようなもの。1年後、2年後の本格再建で再び経営の試練と向き合うことになるのです。


辻憲子さん。店舗再建費用の75%は補助金で、残りは自己資金です。「土地も住む家も買わなきゃならない。娘夫婦はいますが返済はやはり重たいですよね」とお孫さんの顔を見ながら。
辻さんの理容室のほか美容室、漬物工房、塾、飲食店、卸倉庫など6店舗が向い合せに並ぶ合戦原地区の仮設商工施設。

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