
不知火とデコポン
        
 
              不知火オレンジは清見タンゴールと中野3号ポンカンの交配種。当初、実のてっぺんに突起(デコ)が出ることや果皮が粗いことなど「見栄え」の理由から品種登録はされなかった。その後、熊本県宇城市(旧・不知火町)で「不知火」と品種登録されて栽培がスタート。さらに熊本県果実農業協同組合連合会が一定の基準(糖度13度以上、酸度1度以下)を設けたものを「デコポン」と商標登録した。こうした経緯から、市場には「不知火オレンジ」と「デコポン」が流通している。品種としてはどちらも同じで違いはない。            
            
                地道な努力で
            
         ならコープの産地直結商品を数々手がける(有)肥後農産出荷組合では、宇城市8名、熊本市1名の生産者と提携して「産直・不知火オレンジ」を出荷する。「デコポン発祥の地として常に良い品種を研究、栽培方法も工夫しています。生産地はいずれも南斜面の日当たり・風当たりの良好な土地が多いです。急傾斜地のため手入れや収穫には苦労しますが、土地の水はけが良いので味の良いものができます」と同組合代表の宮本さん。
   		 もみ殻、牛糞などでしっかりと木々の根が張ることを促す土づくり。豊かな実りのための花芽がたくさん芽吹くようにと与える油かすや骨粉。こうした有機質肥料を主体に、枝葉の剪定作業(風通しの確保や黒点病の予防)など地道な努力と苦心を重ねて「産直・不知火オレンジ」が栽培されている。
		右上/彼方に雲仙普賢岳を望む圃場 右下/収穫直前の不知火オレンジ
		
		中/木々の中での収穫 左上/余分な枝葉を切り取る 左下/収穫した実をコンテナへ
				
 
実りの向こうに 
 今回、訪ねたのは熊本市郊外の生産農家。山肌に石垣を組んでつくった圃場は、収穫のピークを迎えていた。眼下にひろがる有明の海。彼方には長崎・雲仙の山々。最高の日当たりと潮風は、柑橘栽培にとって極上の環境だといえる。流れるように繁る葉の中で星のようにかがやくオレンジの果実。その美しい風景の中で、生産者たちは一心に収穫を続ける。時には這うように屈み、時には動きを阻む枝葉の中で、実りの一粒たりとも見逃すことのないように・・・・四季を通じての施肥、剪定作業をはじめ、収穫から出荷の際にも生産現場ではさまざまな苦労がある。実りの向こうにある、こうした出来事に想いを馳せると、ふいに、どこかで読んだこんな言葉が想い浮かんだ。
		 「星があんなに美しいのも、目に見えない花がひとつあるからなんだよ」
		 大切なことは、いつも見えないところにあるのかも知れない。
		
		
				
						
						 1. 圃場での収穫 
						 木の内側に入り込んで収穫する生産者。枝葉を避けながらの作業はかなり辛い。 
				 
				
				
						
						 2.まずコンテナへ
						 腰に付けた袋が実でいっぱいになると、すばやくチェックしながらコンテナへ。 
						
				 
		 
		
		
				
						
						 3.傾斜地の力仕事
						 収穫の都度、数々のコンテナをモノレールまで運ぶ。体力勝負だ。 
						
				 
				
				
						
						 4.斜面はモノレールで
						 圃場には急傾斜地での運搬に欠かせないモノレールを敷設。このモノレールを利用して麓までコンテナを運ぶ。1日に何度も往復する。
				 
		 
		
		
				
						
						 5.麓のトラックへ
						 モノレールからコンテナをトラックに移して、ようやく収穫が終わる。
				 
				
				
						
						 6.農家でのチェック
						 収穫した不知火オレンジは、農家でひとつずつ検品する。
						
				 
				
		 
		
		
				
						
						 7.表皮を乾かして
						 検品後、風通しの良い場所に2週間ほど保管。表皮が乾燥して貯蔵性がよくなる。
						
				 
				
				
						
						 8.ビニールに入れて 
						 最後はひとつずつビニールに入れて貯蔵(酸を抜いて味をまろやかに)。その後、大きさを選別して出荷となる。