知恵と工夫で
室町時代末期にポルトガルの宣教師が長崎に伝えたといわれるカステラ。愛媛県のタルトやおせちの伊達巻きも、ルーツはカステラにあるという。小麦粉、卵、砂糖だけで乳製品を使わなかったため、酪農がなかった当時の日本にも伝わりやすかったのだろうか。ただ、我が国にはオーブンがなかったため、製造には炭火を使った引き釜という装置の考案もあったと伝わる。また、その味は必ずしも万人受けするものでもなかったようで、もう一度砂糖で煮詰めたなどの逸話も。
現在のカステラが完成したのは、明治になって水あめの使用がはじまってから。これによって「しっとり」した食感に(後にはザラメの使用で、さらに保湿効果は高まった)。南蛮渡来の品ではあるけれど、長い歳月の間に日本人の知恵と工夫が積み重なって、カステラは我が国の美味しいお菓子に生まれ変わったといえる。
ちなみに、今回取材したメーカーの資料によれば「長崎かすてら」は地域商標とされている。「長崎かすてら」を名乗るためには、長崎県内で製造していること・長崎県菓子工業組合に加入している製造者のものであることが条件だ。
右上/普賢岳を望む鶏舎 右下/卵を育む親鶏の飼料
中/卵の生産者 左上/工場での洗卵 左下/工場での割卵(かつらん)工程
変わらない味
メーカーの製造現場では、伝統的な製法に沿って地域に根ざした商品づくりがすすめられていた。
まず、卵は地元・雲仙の契約農家で生まれたものを使う。カステラづくりの材料分は全て買い受けるという契約のもと、飼料管理も含めた強い結びつきの中で新鮮な卵が日々工場に入荷する。
小麦粉は国内産(主に九州産)にこだわり、焼き上がりの食感に特長が出る品種を選ぶ。ここに水あめ、ハチミツ、ザラメなどを加えて生地が完成する。
生地の仕上げで目を惹くのは「泡切り」といわれる作業。竹ベラで生地を丁寧に混ぜ合わせ、空気をたっぷりと含ませる伝統の職人技。膨張剤を使わなくても、この作業でふんわりと焼き上がる。
ザラメによる高い保湿効果、泡切りによる生地のふくらみ・・・・卵と小麦を基本に変わらない味を守るからこそ、ひときわ個性を放つ美味しさが「CO・OP 長崎かすてら」にはしっかりと詰まっている。
1. まずは生地づくり
割卵後にろ過した卵液、小麦粉、ハチミツや水あめなどを調合して生地をつくる。
3.生地を流し込む
ザラメを敷き終わると、型枠に生地を均一に流し込む。
2.ザラメを敷いて
生地を流し込む型枠の底に「長崎かすてら」の特長となるザラメを敷き詰める。
4.ふんわり、しっとり
さらにザラメを振りかけた後、竹ベラで生地に空気を含ませてゆく。とろけるザラメが生地をしっとりさせ、『泡切り』と呼ぶ職人技でふんわりした食感をだす。
5.型枠から出して
型枠から取り出した焼きたての生地は、かなりの大きさ。
6.ひと晩、寝かせて
焼き上げ後は必ず一定時間、一定温度で保管。焼きたてよりも味がよくなる。
7.タテに、ヨコに
完成した生地は一本の大きさにカット、その後、ひと切れずつカットする。
8.包装して完成
カット後、金属探知機や計量などを経て包装、商品が完成する。