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人「和」の心髄
 私たち日本人は、実にきめ細やかに「うまみ」を探求してきた。長い歴史の中で変化と洗練を繰り返しながら、素材の風味を損なわず美味しさをふくらませる知恵───たとえば、そうめんと横に添えためんつゆ───今回、誌面に登場するのは葛そうめん。その旨さを味わう準備からはじめよう。
 鍋に水を3カップ、そこに汚れを拭いた昆布(10グラム)、干し椎茸1個。3時間ほどで昆布がやわらかくなれば椎茸を取り除いて中火に。泡がたてば昆布を取り除く(絶対煮立てない)。沸騰すれば鰹節(20グラム)を入れて煮立てないよう2〜3分。火を止めて鰹節が鍋の底に沈んだらキッチンペーパーで漉して。だしには昆布のグルタミン酸ナトリウム、鰹節など動物性食品のイノシン酸ナトリウム、椎茸のグアニル酸ナトリウムのうまみが漂う。ちなみに、鰹節を入れる際に干しエビや干し貝柱を鰹節と同量入れると、頬が緩む味になる。
 ふたたび鍋を取り出して、みりん4分の3カップを火にかけアルコール分を飛ばそう。そこに同量の濃い口醤油、先ほどの「だし」を。煮立てば鰹節10グラムを入れて火を止めて。5分ほど置いてからキッチンペーパーで漉せば・・・・さあ、これで支度(約4人分)は整った。
右上/圧延・板切りを経た麺(の素) 右下/「掛け巻き」で細くなってゆく
作業風景
中/「箸入れ」でさらに引き延ばす 左上/断裁で上部の「節」を切る 左下/選別作業の様子
「本葛」のなめらかさを
 そうめんといえば、ルーツは奈良。うどんなどとおなじく、奈良時代の索餅(さくへい)が原形だといわれる。ただ、それは大きくよじった餅のような形状で、手でちぎって食べたという説も。今に近い格好となったのは鎌倉時代以降。挽き臼などの製粉技術が整い、練った小麦に油をつけて延ばす技術が伝わって進歩した。
 今回登場の葛そうめんは、緑ふかい東吉野村に工場を構える坂利製麺所が製造する。錚々(そうそう)たる老舗が並ぶ奈良の地では、創業30年ほどのメーカー。しかし当初から国産小麦にこだわり、上質な胡麻油での製造をすすめる。一般にそうめんは「細さ」が上級基準のひとつになっているが、商品は吉野地方で昔から親しまれた「本葛」を使ったのどごし・なめらかさに重きを置く。
 包材に記された「ゆで方」を目安に、指先が切れそうな氷水でめんを冷やそう。たっぷり、つゆに浸して頬張れば・・・・噛みしめたその歯ざわり、のどをくすぐる感触。舌の上に満足の涼を呼ぶ、東吉野の味がする。
中見出し
ひとつひとつを
1. まずは塩水を
塩の濃度はその日の気温や湿度によって工場長が決める。麺の仕上がりを左右する「キモ」の部分。
丁寧に処理
2.小麦粉を練る
この作業もその日の気温や湿度によって微妙に調整。職人の経験と勘が生地の出来を左右する。
ボイル処理
3.圧延でコシを
練った小麦粉はこのように圧延する。グルテンが網目状になり、麺のコシの素地ができる。
すぐに冷却
4.徐々に細長く
圧延後は板切りなどの作業を経て、自動巻き工程へ。麺生地が徐々に細長くなってゆく。
決め手の生姜
5.「8」の字に
大小の滑車を組み合わせたユニークな仕掛け「掛け巻き」で麺によりをかけ、さらに細く。
タレと一緒に
6.「ふくら出し」で
掛け巻き後に熟成を経た麺は「ふくら出し」と呼ばれる工程へ。直後に「箸入れ」で一気に引き延ばす。  
味が染み渡る
7.足付け・門干し(乾燥)
箸入れ後は「足付け」でさらに延ばす(手作業/手延べ)。そして門干しで風を当てながら麺を箸で「割って」ゆく。
出荷へ
8.いよいよ断裁
門干し後、下側のふしを取り去った麺を断裁。この時、上側のふしを切り落とすと同時に19センチの長さに揃える。
生産者


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