おいしさは原乳から
雌牛は生後14ヵ月程度になると種付けをおこなう。そして約10ヵ月間の妊娠期間を経て出産。生乳を搾ることができるのは、その後から。酪農家は出産後およそ10ヵ月ほど搾乳を続け、約2ヵ月の期間をおいて次の種付けをおこなう。毎年、あたりまえのように豊かな生乳が得られるのは、雌牛が毎年のように出産しているから。その影では搾乳できるまで2年間も仔牛を育て、出産間際になれば昼夜を問わず雌牛たちを見守る酪農家の姿がある。
「ほんとうに驚きました。1年中、まったく休みがない。朝は早いし夜は遅い。生き物を相手にしていることの難しさも痛感しました」今回、訪ねたのは大内山酪農の生産者夫妻。看護師だった妻が結婚当初の感想を教えてくれた。看護師もおなじく大変な職業だが、酪農家の日々は彼女の想像を超えていたようだ。
そうして搾った生乳は、無条件で酪農協に受け入れられる訳ではない。大内山酪農の場合、無脂乳固形8.3%、乳脂肪3.5%以下のものは受け入れに「待った」がかかる。また、生乳中の体細胞数にも基準があり、超えるとペナルティー(その分、乳価が安くなる)がある。しかし夏の暑さや冬の寒さで雌牛の乳質も変化する。そのため夏は天井の送風機を回したり、冬は牛舎に防護シートをかけるなど手間は尽きない。乳脂肪分を上げるには濃厚飼料を与えるのが近道だが、これには雌牛の胃腸が弱くなるリスクを伴う。
「おいしい牛乳は、やはり健康な牛から。ウチでは濃厚飼料に頼りません」とは夫のS氏。気持ちを込めて育てれば、それは牛たちにも必ず伝わる───彼の想いは、懸命に牛舎の掃き掃除をする際のこんな言葉にも現れていた。
「こうして、一生懸命に掃き掃除(特に雌牛が首を出して餌を食べる床部分)をするんです。すると、オレが頑張った分だけ餌をたくさん食べてくれるんです」
右上/給餌前の丹念な掃き掃除 右下/トラクターでの給餌風景
中/牛舎で生まれた仔牛 左上/飼料を食べる雌牛たち 左下/天井に並ぶ送風機
正直に作っています
糖分6%と甘さ控えめで、豊かなミルク感を味わえる生協ヨーグルト。原乳のよさがストレートに伝わっていることも実感できる。ただ、気になることがひとつ。それは脱脂粉乳の存在。工場からはこんな回答が返ってきた。
「生協ヨーグルトの成分は、脂肪分3.0%以上、無脂乳固形分9.0%以上です。生乳にくらべて脂肪分は生協ヨーグルトのほうが低く、逆に無脂乳固形分は高くなります。そのため、無脂乳固形分を補正する必要から、脂肪分が無く無脂乳固形分が96%の脱脂粉乳を使用します」
1. 順番を待つ
搾乳場の入り口で、次の搾乳(乳しぼり)を待つ雌牛たち。こうした動作は自然に覚えるのだという。
2.ズラリと並ぶ
雌牛が所定の位置に並ぶと搾乳開始。生産者は乳首を清拭してから吸引器を取り付ける。
3.工場に集めて
酪農家を巡って集めた生乳は巨大なタンクへ。タンクごとに生乳の用途は定められている。
4.調合開始
品質検査を終えた生乳に、脱脂粉乳、グラニュー糖、生クリーム(未使用の場合もある)を加える。
5.サージタンクへ
脂肪球の均質化や殺菌処理などを経た原料は、サージタンクで加工のハイライトを迎える。
6.その内部で
ビフィズス菌(BB12)をはじめ4種類の乳酸菌を投入後、タンク内部で攪拌がはじまる。
7.充填・完成
半透明カーテンで全てを覆われた充填機で容器に注入・封印。その後、発酵冷却を経て商品が完成する。
8.品質管理も
工場では生乳の受け入れから商品完成まで、工程に合わせて検査を5回実施。品質管理に努めている。