水平線を望む場所で
佐賀県太良(たら)町───長崎のすぐ隣り、ゆるやかな傾斜とともに有明海へ扇状にひろがる町。目前で獲れる竹崎がに(大きなワタリガニ)は、濃厚な旨味と甘味が口いっぱいにひろがる名産品。ほかにも牡蠣、タイラギ貝、クルマエビなどが獲れるその海を背にすれば、標高1,000mにおよぶ山々が青空に映える。柑橘類の栽培が盛んな緑の中を南北に貫くのは多良岳オレンジ海道という爽快な道。豚舎は、そのオレンジ海道から西の山側にある。もとはミカン山だった場所の頂上に建つだけあって、眺めは最高。明るい太陽。澄んだ風。そして東に青い水平線。
右上/山の頂上付近に建つ養豚場 右下/豚舎の屋根越しに、有明海を望む
中/生産者の池上さん家族
左上/豚舎敷地内の様子 左下/肥育中の豚
「基本」に忠実な肥育を
肥育中の豚には新鮮な水をふんだんに飲ませる。井戸からくみ上げたもので、水質がとても柔らかい。地域には名水百選に選ばれた場所があり、おなじ水脈の水が井戸にも伝わるといわれる。「有明名水豚」のネーミングは、ここから生まれた。
エサにはパン粉を混合して与える。パン粉自体はめずらしいことでもないけれど、福岡の大手製パンメーカーから出る端材・余剰品などをリサイクル、この豚舎のために加工・出荷する品。きめ細かく旨味ある肉質に、さらに加熱後のなめらかさ・甘味を引き出そうとしている。
豚にストレスを与えない広さにも注目。なるべく自由に行動できる空間を確保する。豚舎はブラインドを開ければ壁がなくなる造り。風や陽の明るさ、時には雨を感じながら動きまわることをたいせつにしている。ただ、それはある意味「ぜいたくな広さ」でもある。過密にすれば、おなじ期間に数多く出荷できる。産地直結という信頼関係があるからこそ、生産者も決断できるのだろう。
新鮮で良質な水。状態の良い餌。そしてストレスを感じさせない環境は、豚にかぎらず動物飼育の基本・根本といえる。その基本に努めながら、有明名水豚には約60日間の完全休薬期間(飼料添加物レベルでゼロ)が設けられていることを、最後にアピールしておこう。
1. まずは搬入
と畜場から枝肉が搬入されて、現地(島原市)での作業がはじまる。
2.大きな枝肉を
吊した枝肉を、まずは大きな部位に切り離してゆく。その動きはとても素早い。
3.さらに分割
整形加工するため、さらにブロック肉の大きさへと切り分ける。
4.骨を取り除く
出荷用の大きさに整えると同時に、骨などを取り除く作業へと移る。
5.脂をていねいに
脂身は何度も包丁を当てながら、適度な厚みになるよう加工する。
6.職人のワザ
包丁で削り取ったあとの脂。まるでカンナをあてたような形状に感心した。
7.袋がけをして
整形加工を終えて完成したブロック肉は、ひとつひとつ袋がけをおこうなう。
8.真空パックを
真空パックを終えて完成。ならコープに出荷する。