苦心の養殖
鰻の養殖は、生産農家ごとに手法が異なるといわれる。今回、鹿児島で訪ねたケースを見てみよう。
温室ハウス式の池はコンクリート製。水を循環するための水車などを配置、広さは約100坪ある。そこに出荷前の成魚サイズで25,000尾程度が泳いでいる。一方、シラスから黒子と呼ばれる稚魚の間は30坪の池に約8万尾を放流。以降、40日ごとに選別しながらサイズ別に複数の池で肥育がスタート。養殖期間は200日が目途だが、中には1年以上を要する鰻もいる。
エサは、シラスの場合は最初の10日ほどイカなどをミンチ状にして与える。以降は魚粉主体に5種類の配合飼料を。ビタミンや消化酵素、スケソウダラの肝油を成長に応じて添加、生産者みずからの手で練り上げて使う。ちなみに飼料の魚粉はたいへん良質で、人が食せるほどの品質。エサの具合をたしかめるため、口にふくむ場合もある。
それほど飼料に気を配っても、安定して豊富にエサを食べさせることがとても難しい。これは池の水質管理とも密接に結びつくテーマで、多くの生産者が頭を悩ませる。29〜30度に水温を保つ池の水は亜硝酸値が高くなりやすい。放っておけば元気がなくなり、やがては死んでしまう。ただ、死なない程度にギリギリの線で高いと、エサの喰いつきが爆発的にすすむこともよくある。pH値の変化をふくめ水質コントロールは腕の見せ所であり、同時に収入を左右するポイントでもある。
右上/大変貴重な鰻の稚魚 右下/勢いよくエサに喰いつく成魚
中/手づくりのエサを持つ生産者 左上/ハウス式の養鰻池 左下/品質管理室での作業
コープ品質で
大隅地区養まん漁業協同組合員が育てた鰻は、おなじく漁協組合員の工場で加工・出荷する。注目したいのは、生協ならではの品質管理。理化学検査では使用禁止の薬剤が使われていないか、また、基準値以上の薬剤が検出されないかをチェック。また、川魚臭については生産者から1週間前に鰻のサンプルを複数取ることをはじめ、納品時、焼く前、焼いてからと都合4回のチェックを重ねる。もし、事前のサンプル検査をパスしなければ、生産者は水を換えた池で1週間鰻を再飼育しなければならない。
さらに入荷ごとの鰻の身のコンディションをもとに焼き・蒸し工程を調整。澱粉成分以外の添加物は使用しない無着色のタレで焼き上げる。すっかり高価になった鰻だけれど、食べるなら、コープの鰻をおすすめしたい。
1. これが「立て場」
流水が降り注ぐ桶に鰻を入れ、それを積み上げる立て場。ここで鰻の選別がはじまる。
2.鰻を割く
サイズ別の選別を終えると割き場へ。ズラリと並んだ作業員が次々に鰻を割いてゆく。
3.早技の包丁
作業員の手元。素早い早さで包丁がひらめく。その後に流水をくぐり、すぐに氷詰めへ。
4.いよいよ焼き場へ
氷詰めした鰻は間を置かずに焼き場へ。ラインの上へ丁寧に鰻を並べる。
5.はじめに背を焼く
最初の焼き窯の内部。品質管理情報をもとに当日の身の状態を把握、火加減を調整する。
6.背と腹を焼いた後は
そっと串を刺して身の固さを確認。この作業は蒸し工程でのコンベアスピードにも関わる。
7.蒸し工程へ
ミニシャワーで余分な脂を流し去った後は蒸し工程へ。その後、軽く焼き水分をとばす。
8.タレ漬け4回・焼き3回
タレ漬け→焼きを繰り返せば完成。この後は包装、冷凍して出荷となる。