ルーツは「とり天」
チキン南蛮といえば、カラリと揚げた鶏肉にタルタルソースがのっている・・・・あの宮崎県の名物料理を思い浮かべる人が多いのでは?甘酸っぱいタレを使うところは似ているけれど、今回の商品はソレとはちがう。そのルーツは大分県の「とり天」。地元では県民食といっても過言ではない庶民の味。喫茶、定食、中華や居酒屋からスーパーの総菜売り場まで、あらゆる食の場で提供されている。
鶏肉に下味をつけてフリッターのような感じで揚げる「とり天」は、酢醤油や天つゆのほか、ポン酢で食すことが多い。一方、今回誌面に登場する「チキン南蛮」も、ササミに下味をつけて揚げるという点ではおなじ。ただし食感はまったく別モノ。キャノーラ油でサクサクに揚げた「天玉」は、他にないシアワセな歯ざわりで舌を楽しませてくれる。「どちらかといえば、アジの南蛮漬けをイメージして開発した」というメーカーの言葉どおり、衣にサッと染みるタレはチキンエキス(親鳥を丸ごと煮込んだ自社製)を効かせた甘酢風。玉ねぎなどの野菜と頬張れば、その美味しさはとっても爽やか。
右上/ササミの先端にある白く固い筋 右下/きれいに処理した後のササミ
中/包丁を使う作業員 左上/衣付け前に丁寧に並べる 左下/衣をやさしく馴染ませる
手づくりの味
工場では、最初に原料のササミをカット処理する。ひとつひとつを手作業で素早く丁寧に固いスジなどを取り除く。別の場所では肉の下味を付ける調味液の製造も。本醸造薄口醤油やチキンスープなどを調合するが、チキンスープは自社の調味料工場の製品。親鶏を丸ごと煮込んで旨味を出す。カット処理を終えたササミに調味液を加える作業では、真空にした状態で攪拌(かくはん)。これで肉にじっくりと味が染みこむ。
その後、さらにササミの食感をやわらかくするため、肉の厚さが一定になるよう伸ばして並べる。次の衣付けでは、まず粉末状のパン粉をうすくまぶして。ここでも作業員がひとつひとつをチェックしながら手を添える。白く濃厚なバッター液をくぐれば、厚く敷き詰めた「天玉」の中へ。上からも雪のように天玉が降り注ぐ。そうして完成した衣がしっかりと馴染むように、やはり作業員が最後の手を添える。
直後の冷凍ラインまで、手づくり感あふれる専用ライン。1990年の案内以来、高い人気を誇ることにも納得できた。
1. 固いスジをとる
まずはササミのカット作業をおこなう。整形をかねて固いスジなどを丁寧に取り去る。
2.下味をつける
カット作業を終えたササミは、自社の調味料工場で製造したチキンスープなどで下味をつける。
3.染み込む旨味
ササミの中にじっくりと旨味が染み込むように、真空状態で調味料と混ぜ合わせてゆく。
4.丹念な衣づけ
微粒状のパン粉をうっすらと付けてから、バッター液にくるまれるササミ。
5.降り注ぐ「天玉」
厚く敷き詰めた天玉の中へ。上からも天玉が降り注ぐようにしてササミを包み込む。
6.最後の仕上げ
天玉に過不足がないかチェックを兼ねてやさしく整える。最後まで人の手の役割が大きい。
7.すぐに冷凍
衣付けが完了後、スグに急速冷凍をおこなう。これでササミや衣の食感が、グンとよくなる。
8.包装出荷へ
計量チェックなどを終えれば、タレと共に袋詰めへ。後は出荷を待つばかりだ。