絹ともめん
表面を油で揚げることで、豆腐の食感を残したまま香ばしさを加えた厚あげ。焼きたてに生姜醤油をサッとかけまわして───おでんの鍋にそっと忍ばせて───調味料やダシのしみこみの良さが、かみしめた豆腐をグッと旨くする。
この厚あげ、中身にはもめん豆腐を使うのがそもそもの流儀だが、絹ごし豆腐もよく目にとまる。今回、誌面に登場する「短冊絹厚あげ」がソレ。「三角厚あげ」が従来のもめんタイプになる。それぞれ作り方に違いがあり、味わいも異にする2アイテム。どんな特長をそなえているのか、製造現場を訪ねてみよう。
工夫の力点
短冊絹厚あげをフライパンで加熱して、あつ〜いヤツにかじりついてみる。カリっとした香ばしさの直後にプリプリッとした感触が舌の上にひろがって、誰もが「!」と微笑する。その正体は製造中に仕込んだタピオカ澱粉。ただ、メーカーは使った理由を、「厚あげを絹ごし豆腐でつくる場合、弊社の連続ラインでは豆腐の保水性の観点から製造が困難でした。しかし、タピオカ澱粉を加えることで絹ごし豆腐の保水性が損なわれず、量産化が可能になったのです」と語る。
濃度が高い豆乳を用意した上でタピオカを加えたのは、独特の食感をねらってのこと・・・・だけではなかった。
「三角厚あげ」はもめん豆腐ベース。とはいえ、なめらかさでは引けを取らない。一度固まった豆腐をわざわざ崩し、上下の布に挟んでプレスしてつくったもめん豆腐───酸化度2.5未満で交換する大豆油でカラリと揚がったその味は、国産大豆の旨味をやわらかく伝えてくれる。
環境にも配慮
毎日、工場で大量に出るおからは自社で乾燥した後に家畜の飼料やキノコの菌床、ネコ砂の原料としても商品化されているという。また、工場内のバイオマス設備では廃棄物からメタンガスを生成、熱源(廃水処理で出る汚泥乾燥用の熱源や発酵用タンクの熱源)として再利用しているそうだ。商品を手にしているだけでは見えてこない背景だが、生協なら大事なコトではありませんか?