エコフィードの牛乳
近年、後継者不足と廃業が相次ぐ酪農。その状況はなかなか好転のきざしを見せない。ただ、一方では千頭単位の飼育数と飼料製造機械を所有、牧場を法人化するなどして成功をつかもうとする酪農家も現れている。長年、ならコープと産直提携を結ぶ大内山酪農。その生産者、尾葡{産御浜ファーム(以下、御浜ファーム)もそのひとつ。2,000頭以上の乳牛を飼育、大規模な搾乳機と飼料の自給自足で地域に確固たるポジションを占める(通常、酪農家の飼育頭数は50頭〜300頭くらいが多い)。そして今、ここで製造する飼料が注目をあつめている。
もともと、酪農家ではむかしから豆腐の副産物であるおからなどを飼料原料として工夫してきた。牛乳生産にとってエサ代は莫大な費用を占める。安心で質が良く、牛乳の味もよくなり───そして安価な飼料を見いだすことは経営を左右する課題だといえる。
御浜ファームでは、先代の牧場主が食品副産物に早くから目をつけた。ジュース製造の後に出る蜜柑粕(かす)、パイン製造や梅など・・・・これらを引き受けて飼料化すれば、牛に安心、
経営的にもたすかる(実際、この牧場では輸入飼料の大幅削減にも成功した)。それだけではない。食品製造業と酪農が「ひとつの輪」となって環境負担が軽減されるという一石二鳥の効果を生む。
御浜ファームでは、現在の牧場主になって前述のように大幅に飼育頭数をふやし、この「エコフィード」を牧場内で製造。現時点で、生協牛乳の大半を賄うまでになった。
酪農新世紀へ
一方、ならコープでは酪農を含めた地域の農業活性化を視野に、循環型自給飼料の話し合いを大内山酪農とすすめてきた。ねらいは飼料稲と米を飼料として活用すること。酪農家が牛舎から出る牛糞を良質な完熟堆肥にして米農家に供給すれば、両者は「ひとつの輪」となって資源循環型の地域農業が成立する。輸入飼料(主にトウモロコシ)に依存する経営を少しでも和らげることができれば、きっと酪農家の経営体力は向上する。国内の飼料自給率の向上をはかり、消費者により安心で良質な牛乳や米を提供する道も拓ける。
この取り組みは今年の秋から少しづつ実施され、来年からは一部で資源循環型の酪農として完成する。生協牛乳の中に、たとえわずかでも「はっきりと意味のある」生乳が入ることになる。地域の農業全体が活力を持ち、酪農産地が力をつけるようになれば・・・・大内山酪農がさらに幅広く、少数経営の酪農家たちとも連携・連帯できるようになれば・・・・酪農新世紀へ向けて、その夢はとても大きなものにつながってゆく。
ほんとうに良い牛乳とは何か。それを知るために、私たちは生協牛乳を手にしたい。