非加熱の風味
野菜たっぷり和風ドレッシングの製造で最も心を砕いたこと──おいしさのポイントを探ってみると、「非加熱」という言葉にたどりつく。原料野菜の中で大きなウェイトを占める国産玉葱と国産にんにく。どちらもカットしてからミキサーにかけ、一晩寝かせたものを「生のまま」で使う。高酸度のお酢に漬け込むことで可能になったこのひと工夫で、食欲をそそる風味がいっそう引き立つ。
もうひとつが、
ベースとなる醤油に生醤油を用意したこと。もろみをしぼって滴る、そのままの旨味と香り。それをひとふりのドレッシングの中に生かしたいと考えた。
玉葱、にんにく、醤油、いずれも加熱を繰り返すと香り・風味の輪郭がぼやけることも多い。ドレッシングの完成に加熱工程は避けられないので、なるべく原料には熱の通らないフレッシュなものを──この贅沢ともいえる仕様が実現できたのは、メーカーが老舗の味噌・醤油メーカーだからこそ。玉葱の皮むきから洗浄、カットなど一連の作業を一貫しておこなえる加工ラインとともに、自社製造の強みが生きる。
うまみ調味料や甘味料を使わずに、油分も25%(市販品で良く売れているのは油分約50%の商品)のあっさり味。野菜はもちろん、鶏肉や豚肉とも相性のよさをみせるこの1本には、食材を美味しくするための手間と人手がかかっている。
すりたての胡麻の味
深煎り胡麻ドレッシングの製造は、やはり原料の胡麻に目が向いた。300ミリリットルサイズで約11,000粒以上、500ミリリットルサイズでは約18,000粒以上を使用するという味のかなめ。高温で焙煎した胡麻を自社工場で「すりごま」にすることで香りを引き出している。
自社製醤油にソテーしたにんにくを加えて厚みを持たせた風味。香ばしく濃厚な胡麻のコク味。そうした味の個性はリンゴ酢でうまくまとめている。そのまろやかな酸味と甘さが絶妙のバランスを保ちながら、飽きのこない味わいを演出。野菜サラダだけでなく、肉・魚介類などにも美味しく使える1本となった。
野菜たっぷり和風ドレッシングが生まれたのは1980年代。きっかけは地元生協の組合員の声だった。1994年からは全国の生協で利用がはじまり、今日に至っている。深煎り胡麻ドレッシングともども、その実直な製造には、ほかにない何かを多くの消費者に感じさせているようだ。