往年の大スター
かつては三大基礎商品と呼ばれた牛乳・卵・米。生協運動を支え、生協商品を語る上でも欠かせない存在だった。中でも産直卵は、奈良県の生産者と提携した生粋の地場産品であり、当時は鮮度・品質ともに特別な支持を集めたアイテムだったと言える。
もちろん、それには理由がある。
出荷する卵はすべて前日に採卵したものであること。飼料は安全な内容であること。鶏の血液、卵黄、飼育環境は3ヵ月ごとに北和家畜保健衛生所の定期検査を受けること─取引にあたり、ならコープが交わした3つの約束─その理念に共感できる生産者だけが集まり、日々、生産に取り組んだ。農畜産物への薬害、それに伴う飼育環境の問題が心配されていた時代の流れを受けて、産直卵は一歩すすんだクオリティを提供する存在として輝いた。
そして・・・・
昨今の物流の進歩は、他地域で採卵したものであっても卵の翌日販売を容易にしている。飼料の安全性、保健所などの定期検査も特別なことではない。産直卵の先進性はスタンダードなものとなり、注目されることも少なくなっている。コープのとある店舗では、新聞紙を上手に折ってつくった袋に産直卵の小玉がぎっしり詰まっていて、それはとても魅力的な価格に見えたけれど・・・・無造作に置かれたソレは、やっぱり無造作なままに見えていた。
実は現在でも・・・・
では、今の産直卵はちっとも進歩していないのだろうか。だから目立たず、フツーになっているのだろうか?
違いはスグに見つかった。定期検査はさらに綿密になっている。卵質検査は、ならコープ品質保証部門と九名の生産者ごとに、それぞれ毎日。奈良県家畜保健衛生所の指導に基づいた鶏舎の環境検査は毎月おこなう。こうしたチェックをこの頻度で地道に続けられるのは、県内産直ならではといえるだろう。
中身は・・・・鮮度は従来どおりの前日採卵。それよりもDHAが豊富に含まれていることがポイントになる。高価なブランド卵とくらべても遜色ないのは驚きの事実で、そのヒミツは飼料中に含まれる魚油にある。成分表示として謳えるものではないが、飼料には大和茶の粉末も配合されている。魚油との風味バランスを保つ効果を期待しているそうだ。
自然な黄色の強さ、温泉卵など加熱時にわかる味の濃さ・旨味、栄養面での付加価値性、どれをとっても昔とくらべて格段に進歩している産直卵。一番の問題は、それを大きく宣伝しなかったコトにあるのかもしれない。