めぐまれた環境
かつては浜名湖を中心に静岡や愛知が産地として知られた鰻。しかし1998年から現在まで、その生産量は鹿児島県が首位を走る。熊本県などとともに、今や九州南部は全国の需要を支える重要な生産拠点。今回訪ねた鹿児島県大隅地区で養殖がスタートしたのは昭和40年代の半ば頃。だが、急速に成長したのは養殖池がコンクリート型の加温方式になった昭和60年以降だと思われる。
鹿児島の温暖な気候にあって、ハウス型の養殖池は年間平均水温を約30度に保つ。このことで鰻の成育がより順調になり、大量生産が可能になった。また、産地周辺は飲用に適した地下水(約18度前後)も豊富で、養殖池にふんだんに使用できる。養殖にはめぐまれた環境にある。
協同の力で
産卵場所のナゾも解明され、人工ふ化も現実味を帯びているものの、今もってシラス(稚魚)が貴重品であることにかわりない。養殖は、あくまでシラスを仕入れ、それを池で成魚と育てることでなりたつ。養殖業を営むものにとってその入手は命だが、シラスの仕入れ先へ成魚を販売(納品)するという慣例も根強く、流通の面では自由になりづらい側面があった。
大隅地区養まん漁協の場合、そうした慣例にとらわれず、成魚の納品ができる(=生協へ集約できる)強みをもつ。このシステムのおかげで、安定供給への道が大きく開けた。そこには、きっと有力者の尽力などもあるのだろう。けれど、漁業協同組合の組合員どうし、協同の力を発揮できているとの意識もある。こうしたメリットの上に「組合員の養殖場で育てられ、組合職員の手で加工される」と販売部長が述べる一貫生産ラインの姿があること─これもまた、国産にこだわる上では大きなポイントだ。
たしかな管理
養殖池の片隅にしつらえたエサカゴに、作業員が大きな練りエサを落としてゆく。すると、すぐにそこはひしめき・もつれあう鰻の巨大なカタマリと化す。その旺盛な食欲に圧倒されるが、逆に生産者は「今日はエサを食べてくれるだろうか」と不安に思っていることが多い。水質検査を怠らず、池ごと(鰻は30〜40日ごとに大きさを分けて飼育、大きさのバラツキを防ぐ)の鰻のコンディションに、日々神経をとがらせる。
そうして生産者が大切に育てた鰻を加工する工場・・・・その品質管理室では、すべての池ごとに残留薬検査をおこない、加工した商品には各種細菌検査を実施する。CO・OP
大隅産うなぎ蒲焼に、最後まで手抜かりはなかった。 |