土と生きた人々
八代の海を干拓した新開地─閉ざされた谷間の村々から、広大な青空に憧れて入植者が移り住んだのは明治の終わり頃。希望にかがやく人々の前に現れたのは、海と陸をへだてる堤防、そして・・・・容赦なく足を傷つけるカキ殻の荒野だった。わら屋根に泥壁の家で暮らしながら「みずからの手作業で田畑をつくりあげてゆく」壮絶な日々がこうしてはじまった。 郡が築いた干拓地、郡築。小作制度が生きていたこの時代、八代郡は大地主でもあった。郡民に理不尽なことをするはずがない・・・・しかし新入者は3年無税との約束は反故になり、さらに塩害で収穫のおぼつかない人々には通常よりも高い小作料が課せられる。郡が干拓地を開く際に負った借金返済。それが理由だった。 「私ども郡有地を耕しています。その小作米で女学校が建っています。けれど娘は女学校へ入れてもらえません。それどころか私どもの娘は小作料が払えぬばかりに売られました。地主の子も小作人の子も生まれた時は同じ赤子ですのに、なんという違いでしょう!」 大正末期、ひとりの女性の悲痛な叫びとともに、農民たちが決起した争議─新聞紙上を賑わせ、全国から注目を浴びた郡築小作争議─は、厳しい弾圧と切り崩し工作にまみれた。それを支えたのは熊本県下の労働者や学生たち、さらに・・・・ 「土は命を生み、育み、すべてのものを浄化する大切な存在。土くさい人間ほどえらいのです」この地を訪れた賀川豊彦(社会運動家・昭和20年日本協同組合同盟を結成、生協の基礎づくりに貢献)は、そう説いたという。賀川のはげましで、人々は小作料減免などの闘いだけではなく、人としての生き方にも目ざめていった。
56年目の赤い実り
日本の敗戦、農地解放を経て人々がトマト栽培に取り組んだのは昭和28年。それまでの米麦農業から園芸農業への転換を後押ししたのは、米軍の特需と日本全体の食糧事情の好転だった。地区の有志4人ではじめて生み出した赤い実。たった数箱でも、それは宝石と呼べるほど高価に売れた。少しずつ増えてゆく参加農家。そうして木製の屋根にビニール貼りの障子戸でつくったハウスから、竹を使ったトンネル型のハウスへ・・・・春作から現在の秋冬作へと変わっていった昭和30年代、幾度となく失敗を繰り返しながら、人々はくじけずにトマト栽培をつづけた。防寒のわら囲いやコモ掛け作業は、まさに泣くような苦労だった。 産地が朝日農業賞を受賞した昭和45年、ついに郡築トマトは全国でも屈指の存在へと成長を遂げる。今では全国一の生産量を誇る八代産冬トマトの中心。歴史の中で培ったスピリットを胸に、生産者たちの顔は明るい。 (参考:熊本県庁HP)
大量でも安定した品質
連作障害の心配から生産者を解放する中嶋式農法の採用で、 良質なトマトを安定して生産。
近年はミネラル分がアップ!
八代の海辺を干拓してつくりあげた大地。 そこで育つ郡築トマトは、ミネラル分もたっぷり。
よりよい実りのために
元肥は約20年前から有機質主体で施肥。 富山ノブ菌を使った生物農法など、豊かな実りに工夫。
1.選ばれた黄色い花
トマトはこんなふうに黄色く可憐な花を咲かせるが、大半は花開く前に摘まれてしまう。
2.腕の見せ所
どの枝を残してどの花芽を生かすか?生産者は絶えず摘枝・摘花をくりかえして実りを管理する。
3.受粉はハチで
受粉にはセイヨウマルハナバチ(国産)の助けを借りる。こんな巣箱がいくつもある。
4.実りは下から
トマトは下から1段、2段、と順に実らせる。通常、6段〜7段目くらいで頂上になる。
5.温度の積み重ね
トマトの赤は、日々に与える「温度の積み重ね」に左右される。冬期はハウス内のボイラーで温度を上げる。
6.朝の収穫
トマトの収穫は朝におこなう。ちょうど茶碗をもつような感じで生産者はトマトに指をそわせてゆく。
7.選果・出荷も
収穫を終えたトマトは、生産者がみずから選果・箱詰めする。その作業は深夜におよぶこともある。
8.JAの集荷所
前夜から生産者が持ち寄ったトマトが続々と集結。ここから、ならコープの農産加工センターへ。
クセになるスープ
●材料(2人分)
トマト・・・・1と1/2個(250g)、ベーコン・・・・1枚、たまねぎ・・・・1/4個、 にんにく・・・・1/2かけ、オリーブ油・・・・大さじ1/2、水・・・・150cc、 固形コンソメ・・・・1個、バター・・・・適量、塩コショウ・・・・少々、パセリ・・・・適量
●つくり方
郡築の赤いごはん
●材料(4人分)
トマト・・・・中玉1個、米・・・・2合、ちりめんじゃこ・・・・大さじ3、昆布茶・・・・小さじ1
うれしい不意打ち
塩トマト・・・・小6個(無い場合はミニトマトの大きいもの)、じゃがいも・・・・250g、 人参・・・・100g、たまねぎ・・・・1/2個、合い挽き肉・・・・100g、塩コショウ・・・・少々、 小麦粉・とき卵・パン粉・揚げ油・・・・適量