小田原と云えば
小田原、と聞いてアタマに響くものに、童謡「おさるのかごや」がある。そう、小田原提灯ぶらさげて〜♪というあの一節。中骨が輪になって蛇腹のように折りたためること、雨や霧に強く丈夫な上に安価であったことで、この提灯、江戸時代には大ヒット商品だった。 もうひとつ。200年以上もの伝統をもつといわれる小田原蒲鉾。地域には現代でも観光客でにぎわう箱根がある。彼の地へむけて、当時も保存性の良い蒲鉾を供給するため、地元の魚を原料に、日本橋の蒲鉾職人が移り住んで製造したとの説がある。 神奈川県の南西に位置、南は相模湾に面する小田原市。清流・酒匂川(さかわがわ)の貫流する足柄平野を中心に、東は大磯丘陵を、西に箱根の山々を望む、のどかな街。その一角に、蒲鉾観光モデル地区とも呼べそうな場所がある。今回の取材先は、なんとそのまんなかにあった。
憶えておきたい味
さり気なく「かまぼこ」をあしらった和食を食べさせる店。地酒や、ちょっと手にしてみたくなる土産物を並べる店。それらの造作は東北地方の古民家を移築するなどして、洋館風の建物もふくめ趣のある風情をたたえる。道をはさんで対面には、観光バスが並ぶ駐車場に接して建つ蒲鉾博物館。次々と観光客が訪れるその場所に、すべてを経営するメーカーの社屋が鎮座する。これまで数々の現場を訪ね歩いてきたが、地域の観光資源となった例では最も規模が大きく映った。 石臼で白身魚をひき、職人が手で盛りつけて蒸す・・・・少量生産ながら、そんな製造を今もつづけるメーカーで、コープの紅白蒲鉾も基本通りにつくられていた。イシモチとも呼ばれる「グチ」の白身だけを丹念に練り上げ、砂糖・みりん・こんぶだし・塩などに、良い水を使っての調味。蒸し加工に工夫を凝らしながら、しっかりとしたコシの中に、ふくよかさ、しなやかさを湛えた歯ざわりが、舌の上に「口福」を呼ぶ。迎春用、ちょっとお値段は張るけれど、誠に縁起の良い美味しさであるといえば言葉が過ぎるだろうか。 むかしは、すり鉢に塩をして白身魚を練り上げ、酒・みりんに、だし汁を加えて板に盛り、松葉をさしてその葉の色具合で蒸し加減を定めながら、苦心してつくったと聞く。そうして澄んだすまし汁に、蒲鉾をひと切れ、ふた切れ。ともすればそれだけのものを、かつての庶民は心から喜んだそうだ。それは、ただ貧しかったからなのか・・・・その答えの片鱗を、この商品が教えてくれるかもしれない。
なんといっても「グチ」100%
弾力と粘りに富むことでは、たいへん優秀な原料魚のグチ。 コレだけを素材に、昔ながらの美味しさを追求。
ストレート勝負
紅白の紅色は、紅麹色素の使用でほんのり上品に。 豊かな弾力は「素材の力」で、リン酸塩は不使用。
素材を生かして
砂糖・みりん・卵白・食塩・魚介エキス・こんぶだし・酒かす・魚醤。 調味の基本は「自然なうまみ」。
1.魚肉を粉砕する
冷凍で届いた「グチ」の白身を粉砕することから作業がはじまる。素材はこれだけだ。
2.入念に練りあげる
粉砕した魚肉は、大型の攪拌機で「切る」ように練り上げ、さらに写真の機械で入念に練りあげる。
3.予め切った板へ
練り終えたものは、チューブで押し出すように板の上へ。この板はすでに切ってある。
4.すばやくカット
かまぼこ板の切れ目にあわせて、すり身を見事にカッティングしてゆく。カットの瞬間は1/200秒ほどだった。
5.いよいよ「蒸し」へ
カット後、カタチが完成。すぐさま蒸し機へと次々に入ってゆく。ここからが重要な工程になる。
6.味を生かした 「二度蒸し」
蒸しの工程は2回に分けておこなう。写真は2回目の蒸しを終えた直後のもの。この工程の善し悪しが味を左右するという。
7.殺菌処理
詳しくは教えてもらえなかったが、機械の中に潜り込むと蒸した後の紫外線殺菌処理が見えた。
8.包装・出荷へ
金属探知機などのチェックを終えればあとは包装・出荷となる。迎春に向け、作業は10月からはじまっている。
新春に、そえる
●材料(2人分)
CO・OP 迎春 小田原御蒲鉾・・・・白・赤3切れ、 おろしわさび・・・・適量、金山寺みそ・・・・適量
●つくり方
初春に、はさむ・つつむ
CO・OP 迎春 小田原御蒲鉾・・・・3切れ 《はさむ》ラディッシュ・わさび・みょうが・とんぶり・・・・適量 《つつむ》生ハム・・・・3枚、トマト・パプリカ・セルフィユ・・・・適量
迎春に、のせる
CO・OP 迎春 小田原御蒲鉾・・・・4切れ、 生ハム・オクラ・姫にんじん・梅肉・芽ねぎ・うずら卵・いくら・山芋・とんぶり・ミニトマト・ ヤングコーン・姫大根・さくらみそ・アスパラガス・水前寺のり・金山寺みそ・・・・各適量