きっと秘策が・・・・
消費者が求める牛肉とは何だろう?
そのためには、何をすればよいのだろう?
味や安全性は、高額な飼料を厳選、飼育経費に糸目をつけなければ可能だ。さらに高価な和牛種を使えば、旨すぎて誰もが笑顔の商品になる。
でも、価格がハンパじゃない。
ならば、いろんな知恵も必要になる。まず、短期間の内にまるまると太らせよう。うまくすればエサ代が浮いてくる。牛の飼育では常にエサ代が大きな負担。これは大きい。
1棟の牛舎になるべく多くの牛を密飼いすれば効率アップ。おなじスペースで年間の出荷頭数だけが上がれば、牛舎の建て増しもせずにすむ。
ただ、そうした環境では牛がストレスにさらされてしまう。衛生面でも手がまわらない上に、健康も心配だ。薬剤の投与である程度はフォローできるのだろうが、要は美味しいモノにならない。
手ごろな価格で旨い牛肉をつくること・・・・そのためには、きっとさまざまな「秘策」があるのだろう・・・・ロイヤルファームを訪ねる前、そんなコトを考えていた。
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牧場での現実
ロイヤルファームの事務所を訪ねて、さっそく肥育の特徴やポイントを質問。ところが何を聞いても
「特に変わったことは・・・・ね?」
どうも、ノリがわるい。ね、と聞かれてもこちらが困る。函館まで飛行機を使い、さらにレンタカーを飛ばしてきた心に、みるみる黒い雲がわきおこってきた。
「まあ、詳しいことは明日、牧場で・・・・ね?」
結局、期待していたような話を聞くこともなく、その日は終わってしまった。
翌日は、地元でも滅多に見ないという夏晴れ。かなり暑い。牧場へ踏み込むと、まず「ニオイ」のないことに気づかされた。壁の部分が開け放たれた牛舎に、毛づやのよい牛たち。みんなイキイキと大きな瞳をむけてくる。
さらに。
足元の敷料(おがくず)が汚れていない。かなりマメに交換しないといけないが、小型のブルドーザーを使っても相当の手間と費用がかかる。おまけに、牛が密飼いされていない。だから、昼下がりになるとフカフカの敷料の上で、いっせいに牛たちが寝そべりはじめる。天井付近には大型のファンがズラリ設置され、建物自体の通気の良さと相まって、湿度も抑えた環境だ。これほどストレスのない環境で肥育された牛なら、その肉質の良さも想像できる。
そうして、のんびりゆったり飼われている牛の飼料にはモネンシン(飼料に添加する薬剤の一種)を使っていないという。この薬品の使用停止は畜産農家にとってたいへん勇気がいる。なぜなら、国から使用を禁止されているわけでもない上に、牛の内臓強化には大きな実績があるからだ。
ヒミツのハーブ類や生菌剤。2年の試行錯誤を経て、まったく自然な飼料づくりに成功した。季節ごとに「飼料会社と密の調整」もはかりながら、すこやかな牛肉づくりは順調だ。
「あたりまえのことに忠実でありたい。それは決して、特別なことではない」
ナルホド・・・・言葉ではなく、見ればわかるということか。想像とはちがったけれど、安心で美味しい牛肉づくりは、今日も着々とすすんでいるにちがいない。
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