ちょっとした逸話
こんな話がある。
アメリカのとあるパン屋さんで火事がおこった。消防隊が出動、火は消し止められたが店は大きく焼けてしまった。店主が焼け跡をみてみると、焼けたような焼けてないようなパンがでてきた。それをもう一度焼いて食べてみると、とても美味しかった。その出来事がヒントになってブラウンサーブロールパンは誕生した・・・・実際に製品を考案したのはゼネラル・ミル社(1949年)だといわれる。ただ、真偽はさておき先の逸話もよくできた話といえる。
今回商品の製法で最もたいせつなことは、焼き色をつけずに、しかも中心まで火を通すことにある。冷蔵で届いたその真っ白なパンを、家庭で焼くのが醍醐味だ。発祥の地アメリカでも、主婦がこのパンを購入後、手軽に焼きたてのホットロールをサーブできることからブラウンサーブ(焼き色をつけてサービスするの意)と呼ばれ人気を得たという。その名はまさに「焼きたての味」の提供にほかならない。
●
丁寧でリッチな加工
商品を製造するのは、奈良県桜井市の巽製粉(株)・フローベル製パン事業部だ。ならコープのプライベートブランド品として開発されたのは意外に古く、10年以上も前のことになる。
工場では、吟味した小麦粉を製粉することから作業がはじまる。イーストやイーストフードなどを入れた粉を仕込み水で練り、発酵室で4時間以上寝かせて本仕込みへ。ここで塩や砂糖などの副材料を入れるが、卵は奈良県産の卵だ。また、プレーンタイプのパンに配合する発酵バターには、宮崎県の高千穂農場産を使っている。
こうした凝った材料を混ぜ合わせて生地を練り込み、さらに寝かせて生地玉をつくる。それを休ませ、成型して発酵、オーブンで「白く焼いて」作業は終わりにちかづく。あとはコンベアの上で30分ほど冷却すれば完成だが、このときの仕分けは手作業でおこなう。機械化するとカタチがくずれる恐れがあり、熟練を要するこだわりの作業だ。以前、某メーカーがブラウンサーブロールパンを製造しようとしたときは、この部分を機械化できなかったため断念したとのエピソードがある。
●
よいものを見なおそう
商品の内容をつぶさにみてゆくと、実に真面目なつくりであることがうかがえる。地場で製造することのメリットを生かしていること・安心して口にできる原料のみであること・低価格化がすすむ厳しい状況にあっても良質な副材料にこだわっていること・・・・プライベートブランド品であっても、あまり身近にありすぎると、こうした美点を忘れてしまいがちだ。今では日本生協連のコープ商品として全国の生協で供給、多数のファンを獲得したブラウンサーブロールパン。それは単なる物珍しさだけではない気がする。
最後に余談を。
冷蔵品なのだから、ひょっとして冷凍も・・・・?商品を手にすると、つい、そんなコトを思いつく読者も多いだろう。だが、パンを発酵させるイースト菌には冷凍用・冷蔵用の2種類があり、本品は冷蔵用のイースト菌仕様だ。どうしても、という場合は冷凍できなくもないが・・・・自然解凍で解凍しなければならない上に、オーブンでも長めに焼かなければならない。そして美味しくできない。ないないづくしでガンバルより、やはり賞味期限内に食べてしまうのがいいようだ。
|