伝統が育む味
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まずは丁寧にカット
半解凍した原料を包丁で一口大にカットして、工場での加工がスタートする棒だら煮。ひと切れ、ひと切れを丁寧にさばいてゆきます。 |
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調味料で炊く前に・・・・
真鱈は味付けの煮炊きをする前に、水煮ボイル・アク抜きをおこないます。3度の洗浄でアクが魚体に付着するのを防いでいます。 |
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うす味でやわらかく
じっくりと醸し出された小豆島産醤油は、やや色が黒く、そのまま炊き上げれば色の濃いしじみ貝に。そこで、真空釜を使ってマイルドな色味に炊きあげています。 |
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手作業の「骨抜き」
今回の撮影で、手づくりを最も感じた作業。調味料で仕上がった棒だら煮の身、そのひとつひとつから骨を抜き取っているシーンです。すこし、感動しました。 |
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江戸時代は良質な塩の産地だった小豆島。その塩に九州から運んできた大豆や小麦を利用して島の醤油づくりは盛んになった。関西方面への海運にも恵まれたことから、近代は島の重要な産業へと発展した。
現在、観光客でにぎわう醤油蔵地区には、今も巨大な杉桶で「醤(ひしお)を育てる」蔵がある。黒い屋根瓦に白壁、木製の引き戸・・・・むかしながらのたたずまいに代々住みついた麹菌の力で、1年あまりじっくり仕込む。時を惜しまずできあがるそれは、濃い色あいに、しっかりとしたうま味をたたえている。
この醤油を利用して佃煮づくりも盛んになった。海路からやってくるさまざまな食材を、島の伝統で煮含めた味。食品の宣伝文句に「ホンモノ」という言葉はタブーだが、では、これをなんと言うべきだろう?
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どこまでも手づくりの味
今回登場する「棒だら煮」「生姜しじみ」の製造は、もちろん機械化されている。ただ、随所に人の経験・人の手が生きるところに特長がある。
棒だら煮では、原料のカット・ボイル・調味・骨抜き・袋詰めにいたるまで、すべてに人の手のぬくもりを感じる。たとえばボイル後の調味(含め煮)では屈折糖度計で仕上がりを確認するが、最終的な判断は「長年の経験」になる。調味後の真鱈の身は、とげ抜きで1本1本、微細な骨を抜いてゆく。機械で真空パックする前には、作業員の手が袋をやわらかく包むように、さりげなく形をととのえる。
生姜しじみも、またしかり。真空釜で煮るときも煮た後の乾燥作業でも、器具を握る手や肩が忙しく動き働く。そこには先輩から受け継いだ「教えと技」が生きている。
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こだわるが故に
棒だら煮は小豆島産の醤油を使わない。商品の色味が黒くなりすぎてしまう・つくるごとに味にバラツキが出てしまうからだという。また、生姜しじみは中国浙江省の湖が産地になる。税関では抗生物質の有無・ポジティブリストの安全性が確認され、メーカーでは定期的に湖のしじみ貝・湖底の泥を、財団法人日本冷凍食品検査協会で検査(有害金属および石油物質)しているということだ。
高価な真鱈にこだわる棒だら煮。「粒ぞろい」にこだわり、桶づくりの醤油で味付けする生姜しじみ。伝統と人の手が支えるその味を、ぜひ一度おためしいただきたい。
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